便秘に悩んでいる人は少なくない
毎日決まった時間にお通じがあるという人もいれば、なかなかお通じが来ないという人もいるでしょう。
何日もお通じが来ないと、なんだか不安になってしまいますし、体も重たく感じられますよね。
では、便秘とは具体的にどのような症状を指すのでしょうか?
便秘と一口にいっても、学会によって定義はまちまちです。
ここでは、「日本消化器病学会」の定義を参考に便秘の原因と解消法を考えていきたいと思います。
日本消化器病学会の便秘の定義は以下の通りです。
『便秘とは、排便の回数が減ることです。
排便の回数は人によっていろいろで1日2〜3回の人から2〜3日に1回位の幅に広がっています。
この幅からはずれている場合は一応異常かもしれないと考えますが、1日3〜4回でもあるいは3〜4日 に1回でもそれが長年の排便習慣で、全く苦痛がなければ便秘と考えなくてもよいでしょう。
しかし、便秘薬を使わないと出ないとか、2日に1度でも腹がはって苦しくなるなどという場合は便秘として治療した方がよいでしょう。』
便秘とは「〇日出ないから便秘」と明確な定義はありません。
2~3日に一回のお通じでも、自分がスッキリできるのであれば心配しなくても良いでしょう。
しかし、トイレに行ってもスッキリしないというのであれば、便秘対策を行うことでスッキリと排便できるようになる可能性があります。
厚生労働省の患者調査(平成26年度)によれば、実に20万人もの人が便秘で病院を受診しているというデータがあります。
引用:http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/index.html
病院を受診していない人も含めれば、さらに多くの人が便秘に悩んでいるということができるでしょう。
女性は2人に1人が便秘に悩んでいる
女性の場合は、さらに便秘で悩んいる人の割合が増えます。
マイナビニュースによれば、20代から30代の女性の2人1人が便秘に悩んでいるそうです。
『まず、「お通じ」に関する悩みの有無について聞いたところ、およそ半数(44%)が「便秘で悩んでいる」と回答した。
年代別で見ると若年層で悩んでいる人が多く、20代では57%、30代では51%と、半数以上が悩んでいることがわかった。』
年代が上がるにつれ、長期に渡って便秘に悩まされている人も増えています。
女性の場合、便秘は肌荒れなどの原因になってしまうこともあるため、我慢したり放置したりするのはおすすめできません。
まず、便秘になってしまう原因を知って、しっかりと対策を行い、便秘を解消していきましょう。
便秘になってしまう原因
それでは、どうして便秘になってしまうのかを具体的に見て行きましょう。
運動不足
現代人は、昔の人に比べて体を動かすことが少なくなったといわれています。
人によっては、仕事中ずっとデスクワークをしているという人もいるでしょう。
運動不足になると筋肉が衰え、血行も悪くなってしまいます。
筋肉が衰えたり血行が悪くなったりすると、腸の働きが鈍くなり、便秘になってしまうのです。
食生活の乱れ
食生活の乱れも便秘の大きな原因です。
栄養バランスに偏りがある食生活を続けていたり、よく噛まずに飲み込んでいたりしませんか?
特に、肉や油っこい料理が多い食生活の人は要注意です。
肉や油っこい料理は、腸の中の悪い菌を増やしてしまうといわれています。
また、ダイエットなどで極端な食事制限をするのも便秘の原因になります。
普段からバランスの良い食事を心がけましょう。
自律神経の乱れ
ストレスなどによって自律神経が乱れると、体の緊張が高まり、腸の運動が活発になってしまいます。
その結果、食後にお腹が痛くなったり、便秘と下痢を交互に繰り返したりしてしまいます。
精神的なストレスはもちろん、環境の変化や過敏性腸症候群などが原因とされています。
我慢のしすぎ
トイレの我慢のしすぎも便秘の大きな原因です。
子供の場合は「学校で排便するのは恥ずかしい」という思いや、「和式のトイレでは快適に排便できない」という理由から、トイレを我慢してしまうことが珍しくありません。
大人では、なかなか席を外せなかったり、忙しかったりしてトイレを我慢せざるを得ない状況もあるでしょう。
人によっては、痔などの理由でできるだけ排便の回数を減らしたいという人もいるかもしれません。
しかし、我慢のしすぎは体に毒です。
我慢を続けると、腸に便が来ても「排便させるぞ!便を肛門まで運ぶぞ!」という「排便反射」が起きにくくなって便秘になってしまいます。
薬の影響
普段から薬を飲んでいる人は、薬の副作用で便秘になっていることも考えられます。
もし毎日薬を飲んでいて、便秘に悩まされているなら、一度医師や薬剤師に相談してみましょう。
便秘の原因を解説しましたが、原因だけでなく便秘のタイプも知ることでより効果的な対策を行えるようになります。
次ではさらに詳しく便秘のタイプを解説しますので、参考にしてみてください。
3つの便秘のタイプ
便秘といっても3つのタイプがあります。
それぞれに症状が異なるので、普段の自分の様子と照らし合わせて、自分の便秘タイプをチェックしてみてください。
自分の便秘のタイプを知ることで、より効果的な対策を取ることができます。
弛緩性便秘
「弛緩性便秘」は大腸の働きが衰えることでスムーズに排便できなくなるタイプの便秘です。
腸の緊張がゆるんで、充分に腸が動かないために、便がお腹の中を移動せず、腸の中に溜まってしまいます。
腸の中に便が溜まると、便の水分がどんどん吸収されて便が硬くなり、さらに排泄しにくくなるという悪循環に陥ってしまいがちです。
女性や高齢者に多く見られるタイプの便秘だといわれています。
けいれん性便秘
「けいれん性便秘」は、副交感神経が活発になり、腸の緊張が高まって動きが活発になることで、コロコロとした便になってしまう便秘です。
食事の後にお腹が痛くなったり、トイレに行ってもスッキリしなかったりといった症状を伴うことも少なくありません。
また、人によっては下痢と便秘を交互に繰り返すこともあります。
ストレスを感じやすい人に多いといわれている便秘です。
直腸性便秘
「直腸性便秘」は、便が直腸に達しても便意が起こらず、どんどんお腹の中に便が溜まってしまうタイプの便秘です。
高齢者や寝たきりの人、トイレを我慢しがちな人に多いといわれています。
便秘を解消するにはどうすれば良いの!?
「便秘は便秘薬を飲めば解消できる!」と思っている人も多いでしょうが、できるだけ自分の力で排便する習慣をつけたいものです。
便秘薬に頼らずに便秘を解消するには、どうすれば良いのでしょうか?
マッサージをしよう!
腸のマッサージをするのも効果的です。
おなかをゆっくりと「の」の字を描くようにして撫でてみましょう。強く揉んだりしなくても、腸には十分な刺激になります。
寝る前や、入浴後などリラックスしている時に行うのがポイントです。
弛緩性便秘の人は、おなかをマッサージすることで腸の運動が促され、スムーズに排便できるようになります。
便秘薬を使ってみよう!
どうしてもスッキリできない時は、便秘薬を使用するのも一つの方法です。
ドラッグストアなどでは様々な便秘薬が市販されているので、自分に合ったものを探してみましょう。
ただし、使いすぎには注意が必要です。
便秘薬を使いすぎると、便秘薬が無いと排便できなくなってしまいます。
便秘薬は、「どうしても出ない!」という時だけ使用するのがポイントです。
便秘薬には、「刺激性便秘薬」と「非刺激性便秘薬」があります。
刺激性便秘薬には「センノシド」や「センナ」「大黄」などが含まれており、腸を刺激して排便を促すため、人によってはおなかが痛くなったりすることもあります。
また、使い続けることでクセになってしまうこともあるので、刺激性便秘薬は使用しすぎないように注意しましょう。
非刺激性便秘薬は、腸に水分を集め、便を柔らかくして排泄しやすくしてくれるタイプの便秘薬です。
刺激性便秘薬に比べてクセになりにくいとされています。
「酸化マグネシウム」などがその代表です。
自分に合う便秘薬がわからない場合は、薬剤師や医師に相談してみるようにしましょう。
しっかり水分補給をしよう!
便秘対策の意外な盲点の一つに「水分補給」があります。
水分が足りていないと、便が硬くなってスムーズに排便しにくくなります。
こまめな水分補給を心がけ、便が硬くなりすぎないように注意しましょう。
特に、寝起きに冷たい水をコップ1杯飲むと、腸の運動が促されます。
サプリメントを使ってみよう!
市販されているサプリメントの中には、便秘解消を目的としたものもあります。
「食物繊維」や「オリゴ糖」「乳酸菌」のサプリは腸内環境を整えてくれるので、便秘に悩んでいる人に特におすすめです。
サプリメントは、毎日継続して服用することが前提なので、安心して長期間服用することができます。
適度な運動を心がけよう!
便秘になる人の多くは、運動不足であることが珍しくありません。
普段から適度に体を動かすようにしましょう。
いつもより一駅手前で降りて歩いたり、エレベーターやエスカレーターではなく階段を使ったりするなど、日常生活の中で少し気を付けるだけで充分です。
ジョギングをしたり、ジムに行って筋トレをする必要はありません。
人によっては、腹筋の衰えが腸の運動を鈍くしていることもあるので、その場合は寝る前などに軽く腹筋を行ってみるのもおすすめです。
腹筋を鍛えるためのトレーニングではないので、汗をかくほどやらなくても大丈夫です。
仰向けに寝て両膝を立て、腹筋を意識しながらおなかを覗き込むように上半身を起こします。
苦しくないペースで、1日10回程度を目安に行ってみましょう。
ストレスを溜めないようにしよう!
ストレスが溜まると、どうしてもお腹の調子が悪くなります。
普段ストレスが溜まりやすい人ほど、意識してストレス発散の時間を作って、ストレスを溜め込まないようにしましょう。
軽く体を動かしたり、趣味に打ち込んだりして、上手にストレスを発散させることで便秘が解消されることも珍しくありません。
特にけいれん性便秘の人は、ストレスの影響による自律神経の乱れが便秘につながっていることが珍しくありません。
便秘と下痢を繰り返したり、コロコロとした硬い便が出たりするタイプの人は、普段からストレスを溜めすぎないように注意しましょう。
食物繊維をたっぷり摂ろう!
まず、便秘を解消するには食物繊維をたっぷり摂りましょう。
きのこや海藻、豆類など食物繊維が豊富に含まれる食品を積極的に食べるようにすることが大切です。
もちろん野菜や果物もおすすめです。
食物繊維は、腸の動きを活発にしてくれます。
弛緩性便秘の人は、毎日の食事に少しでも野菜や果物をプラスしてみてください。
発酵食品を食べよう!
ヨーグルトや納豆などの発酵食品には、腸内環境を整える乳酸菌が豊富に含まれています。
腸内には、たくさんの菌がすんでいますが、悪い菌が増えてしまうと便秘になりやすくなってしまうので、悪い菌を増やさないよう気を付けましょう。
発酵食品に含まれる乳酸菌は、悪い菌が増えるのを抑えてくれるので、毎日1種類は発酵食品を食べるよう工夫してみてください。
食後にヨーグルトを食べたり、朝お椀1杯の味噌汁を飲むなど、無理のない範囲で生活の中に発酵食品を取り入れましょう。
トイレに行く時間を決めよう!
普段からトイレを我慢しがちな人は、トイレに行く時間を決めてしまうのも一つの方法です。
おすすめは朝食の後。食事をしたことで腸が「排便反射(便を出そうとする反射)」が最も起こりやすくなっているため、比較的スムーズに排便しやすいタイミングだからです。
スッキリできなくても良いので、とりあえずトイレに行って便座に腰を下ろしましょう。
トイレに行く習慣ができてくると、徐々にスムーズにスッキリと排便できるようになってきます。
直腸性便秘の人は、普段からトイレを我慢しがちな人が多いと言われています。
トイレに行く時間を決めてしまうことで、徐々に排便のリズムができ、スムーズに排便できるようになるので、試してみてください。
毎日のスッキリを目指して
排便できない日が長くなればなるほど苦しくなるのが便秘の辛いところです。
下剤などに頼ってしまいたくなる気持ちもわかりますが、できるだけ自分の力でスムーズに排便できるような工夫を行うことで、便秘が解消し、毎日スッキリと過ごすことができるようになります。
毎日の生活習慣や食生活を見直すとともに、適度な運動やマッサージも取り入れ、毎日のスッキリを目指しましょう。